一針入魂 縫製職人の声

裁断:渡辺 政照 裁断:三好 三郎 縫製:渡辺 忍

紳士服 松崎の「質」を支える職人気質

 私たちは、関西で言う「坊主」と呼ばれる見習いの頃から、約半世紀に渡り服づくりの修行を積んできました。先輩・同僚といえども職人同士が競争相手であり、日々「負けたくない!」「自分がナンバーワンになるのだ!」と言う負けん気と信念で今日に至ったと思います。
 しかし、私たちの技術の表現は服づくりの作業だけではなく、「お客様がどのような服をお望みなのか?」を見極めるチカラも必要なのです。
 そのために、お客様の好みの把握はもちろん、服づくりに関して自身にプラスになると思われるさまざまなものを「観察」して「感覚」を磨いてきました。
 そのお陰で今日では、お客様と二言・三言お話させて頂いただけで、どんな服をお望みなのかが、ほぼわかるほどの経験と実績を積ませて頂きました。
 服づくりには、生地のカッティングから、芯据え、見返し据え、肩入れ、上襟、袖付けなど、気が抜けない緊張の作業工程が数百以上あります。
 その工程やパーツに一針一心「心=魂」を込めて丹念に洋服を仕上げるのですが、出来上がり寸前でも素人の方には分からないにしても、どうも自身が気に入らない時があります。そんな時は今まで以上に時間をついやして納得の行くまで縫い直したことは一度や二度ではなかったです。これは商売を抜きにした自己満足に過ぎないかも知れません。
 しかし、私たちは自身が納得できないものをお客様にご提供し、世の中に出ること自体、服職人としてのプライドが許さないのです。つまりそれが私たち紳士服 松崎の「質」を支える職人気質(魂)だと自負できる部分なのかも知れません。
 そして、仕上がった洋服にお客様が袖を通され、鏡の前に立たれた時の緊張感と、お客様からの「ありがとう」の笑顔が何ものにも変え難い喜びであり、至福の達成感を感じる瞬間です。
 このような喜びを数十年も経験すると、私たちが作っている洋服、それは一つの「手段」であって「目的ではないのではないか?」本当の目的は、オリジナルの洋服をご提供することで「お客様の満足」を得たい為に作っているのではないかと思うのです。
 そして、それが本来の紳士服 松崎の基本ポリシーであり、私たち職人の気質(魂)なんだと確信に近いものを最近感じています。
 目まぐるしく移り変わるファッション界において、「感覚=センス」は大変重要なファクターであるのは言うまでもありません。お客様からのトレンドを取り入れたご要望にも即応し、最旬の洋服をご提供する喜び。
 しかし、私たちは創作の参考にはしますがトレンドだけを追いかけることは極力しないようにしています。それは、紳士服 松崎が90年間お客様の洋服を作らせていただいた多数の実績の中から得たノウハウに加え、私たち服職人独自のエッセンスを盛り込むことで、「お客様にとって一番お似合いのスタイルをご提供すること」そして、数十年でもお召し頂ける「良質で着心地の良い服をご提供すること」です。
 これが紳士服 松崎の「服づくりの心」と言っても過言ではありません。
 これからも「紳士服 松崎に任せて良かった」と、多くのお客様に言って頂ける「職人魂」を持ち続け、服づくりに励みたいと思っております。